漫画

読者にすんなり染み込んでくる「あたしンち」のリアル

「あたしンち」に登場するいくつかの片思い

あたしンちの魅力的なエピソードの中でも光っているのが、「片思いしている人物」が登場するもの。

みかんはクラスメートの岩木くんに片思いしていますが、少しも思いを伝えられずに一人で岩木君のことで一喜一憂している姿が、読者の片思いの経験に重なります。

特に印象的なエピソードが、はじめてみかんが岩木くんを異性として感じたできごと。

恋愛漫画であれば、男女の出会いは衝撃的なものでなければ盛り上がりに欠けますが、あたしンちは違います。

みかんが岩木くんにきゅんときたのは、バスの中でみかんが落としたペンを岩木君が拾ってくれた、ただそれだけのことです。

みかんはその時の岩木君の顔を湯船につかりながら思い出して「キュン」と胸を高鳴らせます。

岩木君と出会い頭にぶつかったわけでも、岩木君がどこかから転校してきて隣の空いている席に座ったわけでもありません。

しかし、こうした何気ない出来事が胸に刺さってしまうのが、恋愛に疎い女子の片思いの始まりとしてリアルだと言えます。

あたしンちは一般的な恋愛漫画のような大きなドキドキはありませんが、「この感覚、身に覚えあり!」と言いたくなるような恋の場面が描かれているのです。

片思いはほかにも、みかんのクラスメートの男子・吉岡についても描かれています。

小学校からみかんと付き合いのある腐れ縁の吉岡ですが、時々みかんを女子として意識する場面があります。

ただそれはみかんが普段被らないような帽子をかぶっているのを見て「今日のタチバナかわいかったかも」とふと思う程度です。

恋心に発展しそうでしない絶妙な話が描かれているのですが、あえて意識しないようにしているのか、「帽子というのは謎めいたもの」と自分で納得して片付けているのがほほえましく、リアルだと言えます。

さらに、ユズヒコのクラスにはユズヒコを「ユズピ」と心の中で呼んでいるユズヒコファンクラブの女子2人がいるのですが、クラスメイトなのだからどんどんユズヒコと仲良くなれば良いものを、いつも遠巻きにユズヒコを観察し、2人で何かと盛り上がっています。

こうした特定の男子に憧れを抱く、地味目な女子というのも学生時代のリアルな片思いの形ではないでしょうか??

日常に転がっている出来事を愛ある眼差しで切り取る「あたしンち」

 

「あたしンち」で描かれるエピソードには、誰かが夢に向かって努力し、障害を乗り越えて成長するといった明確なテーマはないです。

しかし、私たちが日常で目にする普通の出来事の中に「面白味」「切なさ」「ほほえましさ」などを見出し、作者が切り取っています。

「変な人…だけど、いるよね」と思える人物や、「地味な話…だけどすごい共感できる」といった出来事など、読んだ人が普段何気なく目に映している風景、なんとなく感じる感情にスポットライトを当ててくれているからこそ、誰とも共感できない気持ちを代弁してもらっているような「かゆいところに手が届く」漫画になっているのだと思いますよ!

 

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